2018/08/30

Special Interview 「いわいブランドができるまで」

−−− はじめに、明山はどういった会社ですか?

明山は創業約400年、江戸時代から続く信楽焼の老舗窯元です。1622年、初代の石野伊助が江戸幕府二代将軍の秀忠の命により茶壺(腰白茶壺)を献上し、お茶壺師の称号を賜りました。その後「信楽焼の茶壺にお茶を入れると、長い間湿気を帯びずに良い香りが失われない」と評判になり、諸国大名たちも信楽焼の茶壺を注文するようになりました。以来400余年、信楽焼ならではの温かみのある土味を生かしたやきものづくりを続けています。近年は、花器や傘立てをはじとしたインテリア陶器を中心に様々な商品を製作しています。



−−− その中で、今回リリースされた「いわい」は、どのような商品なのですか?

「いわい」は、明山オリジナルの陶器の節句人形ブランドで、陶雛人形8アイテム、陶兜2アイテムの商品全10アイテムを販売しています。陶節句人形の一番の魅力は、陶器本来が持つ風合いの良さです。陶器独特の質感や素朴なあたたかみが、他にはない奥深さと、落ち着いた華やかさ、あるいは力強さを感じさせてくれます。また、年月が経っても変わらない美しさで飾れるのも、劣化のない陶器ならではの魅力です。

−−− 伝統的なお雛様とは、また違った良さがいいですね。装飾なども細かく作られていますね。

そうですね、いわいの商品は全て職人がひとつずつ丁寧に手作りで製作しています。例えば雛人形だと、人形の華やかさを表現する着物は、色の違う粘土を重ね合わせてつくることで立体感のある仕上がりにしています。また、陶器ならではの装飾技法を生かして、やきものの素材感を残しながらも、細部の装飾にこだわりました。花模様と金彩、そして釉薬の色彩が、白地によく映えて美しいです。着物の裏地にもしっかりと装飾がほどこしているのも、ちょっとしたこだわりです。



−−− 節句商品は、以前から製作されていたのですか?

節句の商品自体は、十数年前より製作していました。信楽焼の節句商品としては他社に先駆けて製作してきましたが、当時はインテリア置物としての商品が中心で、小ぶりでシンプルなものでした。近年になると次第に、お子様の初節句の雛人形や兜としてご利用いただく需要が高まり、初節句向けの商品も販売するようになると、ご購入いただいただお客様から、感謝のお声もたくさんいただくようになりました。そうした需要の変化の中において、私たちは今まで以上に多くのお客様に商品を届け喜んでいただきたいという想いから、節句アイテムのブランド化に取り組むことにしました。

−−− そうした歴史があったんですね。「いわい」というブランドはどのようできていったのですか?

今回、明山の節句アイテムをブランド化するにあたっては、HAKUHODO DESIGNの永井一史氏をはじめスタッフの皆様に協働いただきプロジェクトを進めていきました。
はじめは、これまでに購入していただいたお客様にアンケート調査をお願いし、陶器の節句人形の良い点や改善するべき点などを探るところから始めました。やはり、実際に使っていただいている方のご意見は大変貴重で、気づいていなかった点に多く気づかされました。そうした意見によって、いわいのコンセプトや方向性が次第に絞り込まれていきました。
例えば、収納性について。節句人形は、箱が大きかったり、備品ごとに小箱がたくさんあったりと、何かと煩雑になりがちです。また、マンション住まいの方も多く、なかなかまとまった収納場所を確保するのも大変ということがわかりました。そこで「いわい」では、現代の住宅事情を考慮し、できるだけコンパクトな箱一つでまとまる設計とし、年に一回の出し入れは簡単に、でも押入れの収納はスッキリとなるように、パッケージを改善していきました。

−−− 確かに節句人形は、収納が大変だったりしますよね。ブランド名にはどのような由来があるのですか?

「いわい」というブランド名は、その名の通り「祝い」からきています。日本では古くから、季節の節目に無病息災や豊作、子孫繁栄を願ってお供え物をしたり、厄祓いをするさまざまな行事がありました。現代でも、子どもの健やかな成長を願う「桃の節句」と「端午の節句」は、伝統的な習慣として暮らしの中に根付いています。私たちは、節句の「祝い」というハレの日が、これからも子供の成長への願い、家族のつながり、そして豊かな未来に想いを馳せる、そんな節目であってほしい願います。そして、そんな晴れの日を共に「祝う」、そんなブランドに成長していければと思います。

−−− 「いわい」という名前には、そんな意味が込められていたんですね。信楽焼としては新しい商品ですね。

そうですね、でも信楽焼としての想いもしっかりと引き継いでいます。例えば、明治から昭和期にかけて、信楽焼は火鉢の一大生産地として知られた産地であり、かつては、家族団らんの中心として家庭には信楽焼がありました。モノは変わっても、家族の絆やコミュニケーションを育み、笑顔を届けていく信楽焼のものづくりの想いが、「いわい」ブランドの原点でもあります。信楽焼がもう一度、家族の真ん中に。そのような想いも持っています。
家族のかたち、とりまく環境、すべてが刻々と変化している現代においても、明山は、人の気持ちをやどすやきものの変わらぬ力を信じ、節句の「祝い」の時間、場をいっそう豊かにするブランドとして、新しい信楽焼の可能性を発信していきたいと思います。

インタビュア:三村恵三(株式会社MEETIN代表)

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